介護保険あれこれ58【新たな介護予防サービスは来年度に間に合うか】

 来年度から要支援や要介護度1に提供される新予防給付は科学的根拠に基づいた介護予防効果があるサービスということで、筋力トレーニングやバランストレーニング(転倒・骨折予防)等の運動器の機能向上、口腔機能向上、栄養改善が挙げられている。筋力トレーニングについてはモデル事業の様子が多々報告され、マシントレーニングでは確実に効果があったのは50%くらいらしい。逆に体調が不良やADLが低下した場合もあり、推進する専門家はやり方に問題があるか、やるべき対象を間違えているのだと言っている。
 北海道はマシントレーニングと非マシントレーニングを比較検討し、非マシントレーニングの効果はマシントレーニングと遜色ないことから、非マシントレーニングを勧める方針らしい。トレーニングスタッフ養成には理学療法士等が関わり、3日間の研修を行なっている。スタッフには研修を受ければ誰でもなれるのだろうか。5月9日の朝日朝刊によれば、厚労省は新たな国家資格を作らない方針だ。東京都老人総合研究所が2~3月にスタッフの「先生」を育てる「介護予防主任運動指導員養成講座」を開いた。同紙はさらに茨城県は昨年「シルバーリハビリ体操指導士」を設けたと報じている。これは新予防給付には関係ない。発案者の大田仁史前県立医療大学附属病院長は介護保険の中に入れることには反対で、県民一人ひとりが介護予防やリハビリについて学び、「地域ケアシステム」推進事業の中で生かしたい意向である。
 口腔機能の向上に関する介護予防は都老人総合研究所の研究結果が土台になっている。重度の要介護者には気道感染予防が主であるが、要支援、要介護1を対象とする場合には歯科医の居宅療養管理指導を活用できないものか。歯科衛生士が訪問してアセスメントし、介護予防は衛生士が、治療は歯科医が行い、咀嚼機能改善を目指す。栄養改善は平成7~10年に厚生省が行なった「高齢者の栄養管理サービスに関する研究」と都老人総合研究所の研究がエビデンスになっている。血清アルブミン値3・5g/dl以下の蛋白低栄養状態のリスク者は老人病院患者の約4割に、在宅ケア患者(福井県)の約3割に観察された。栄養改善も往診や訪問診療を受けている高齢者では主治医の指示で管理栄養士が訪問し、栄養アセスメントして栄養ケアプランを作成、実施できるのではないだろうか。
 介護サービス事業所の中には運動器の機能向上に運動指導員の養成をすでに始めているところがある。口腔機能の向上に歯科衛生士を、栄養改善に管理栄養士を確保し始めている事業所もあるだろう。だがか介護認定非該当者対象とする認知症予防、うつ予防、閉じこもり予防や非該当になった高齢者の家事支援(買い物など)等の地域支援事業に関しては動きがみえない。


著者:つくば市 室生内科医院 室生 勝先生

介護保険あれこれ57【地域包括支援センターに地区医師会は積極的に関わろう】

 06年度から導入される新予防給付の中核となる地域包括支援センター(以下、包括C)は全国で中学校区に一箇所、約5千箇所の設置予定という。高齢者が地域で生活していくために介護だけではなく医療や財産管理、虐待防止など様々な問題に対して、地域において総合的なマネジメントを担い支援していく中核機関である。
 その基本的役割は①地域の高齢者の実態把握や虐待への対応など権利擁護を含む「総合的な相談窓口機能」、②「新・予防給付」のマネジメントを含む「予防介護マネジメント」、③介護サービスのみならず、介護以外の様々な生活支援を含む「包括的・継続的なマネジメント」である。
 現行の在宅介護支援センター(以下、介護C)に新予防給付利用者をケアマネジメントする仕事が増えたと言ってよいだろう。厚労省某課長も介護Cをバージョンアップしたものと言っている。地域型介護Cは介護保険制度発足に伴い居宅介護支援事業所の兼任が可能であったため、居宅介護支援に時間が割かれ、介護Cの役割を十分果していないところが多い。この際、包括Cの設置に合わせ、介護Cを見直しが行われるだろう。
 まず、基幹型介護Cが包括Cにバージョンアップすることになると思う。配置される職種は社会福祉士(相談業務)、保健師(新予防給付のケアマネジメント)、スーパーバイザー(困難事例解決、民間ケアマネへの助言指導、民間ケアマネの駆け込み寺、地域医師会との連携等)である。経験豊富な専門職の確保が難しい。新予防給付対象者は多く、つくば市の場合をみると、04年度の非該当が約20件、要支援が約300件、要介護1が約1千6百件で計1千9百件である。要介護1の新予防給付対象者を半分とみても約1千件、毎月平均90件のケアプランを作成し、サービス提供事業者との調整、3ヶ月毎の評価をしなければならない。ケアマネジメントに優れた保健師が少なくとも3名必要である。スーパーバイザーには厚労省は地域における包括的なケアシステム実現の中核となる人材を想定しており、経験を積んだケアマネを対象に研修・育成する予定だそうだ。原則的に市町村が実施主体となる。市町村は非営利法人に運営を委託することもできる。介護C以上に中立性、公正性が求められる。市町村社協が第一候補であろう。介護Cと同様に中学校区に設置された地域型包括Cを基幹型包括Cが統括することになる。多くの市町村では設置体制が整わないので二年間の猶予期間がある。全国に7千8百箇所ある地域型介護Cは統廃合されていくだろう。
 包括Cの中立性の確保、人員派遣、センターの運営支援等のために包括C運営協議会(仮称)を市町村ごとに設置される。構成員は行政機関、居宅介護支援事業所、居宅サービス事業所、介護保険施設、地区医師会、NPO・住民団体・老人クラブ等である。2ヶ月ごとに問題点を検討する常設協議会が望まれる。地区医師会は中立的立場で協議会の牽引役を勤めるべきであろう。行政主導の当て職代表が集まる協議会であってはならない。つくば市医師会は月例在宅ケアカンファレンスを通じてケアマネジメント困難事例への助言・協力、地域包括システム確立への協力、人材育成等に日常的にも関わって行きたい。


著者:つくば市 室生内科医院 室生 勝先生

介護保険あれこれ56【市町村保健師のケアマンジメント研修の充実を望む】

 介護保険制度の見直しと同時に老人保健事業も見直しが行われている。
 65歳以上の全高齢者を対象に現行の健康診査のほかに、新たに栄養状態、運動器機能、口腔機能等に係る機能低下を問診で把握する生活習慣病予防・介護予防検診(仮称)が実施され、非ハイリスク群、高脂血症や高血圧等の危険因子があるハイリスク群、介護認定が必要な群に分けられる。非ハイリスク群には定期的に生活機能状態をチェックして転倒骨折予防教室、運動指導、早期認知症に対するアクティビティ・痴呆介護教室等で生活機能の維持・向上を目指す介護一次予防が予定されている。ハイリスク群には生活機能低下の早期発見・早期対応としてIADL訓練事業、筋力向上トレイニング、食生活改善等の介護二次予防が提供される。これは要支援、要介護1に提供される新予防給付とほぼ同程度のサービスである。一次予防及び二次予防の対象者がサービスを利用する場合には、利用者の状態等の評価、サービス利用計画の作成、それに基づくサービスの利用、利用者の状態等の再評価といったケアマネジメントが導入される。
 18年度からは居宅介護支援事業所のケアマネジャー(以下、CM)は要支援と要介護1の一部、それに要介護2から要介護5のケアマネジメントを担当し、要支援と要介護1の大部分、一次予防と二次予防のサービス利用者に対しては地域包括支援センターの保健師がケアマネジメント(介護予防マネジメント)する。保健師が担当する対象者はCMが担当する事例に比べ遥かに多い。市町村保健師の定員では対応できない。そこで市町村の資格審査を通った居宅介護支援事業所が居宅介護予防支援機関(仮称)と標榜し、所属のCMが保健師の指示に基づいてプランを策定し、高齢者の同意を得た後に保健師にプラン内容を確認してもらう、といった委託事業が行われる。
 問題は居宅介護予防支援機関のCMを指導できる保健師を地域包括支援センターが確保できるかどうかである。保健師は5年間の保健師活動を経た後、CM資格取得可能者となる。CM資格を取得しても居宅介護支援事業所でケアマネジメントの経験を積まないと一般のCMを指導する立場に立てない。理論が先走りしたプラン作成を指導してしまうのではないかと心配だ。地域包括支援センターにはもう一人スーパーバイザー的CMを配置しなければならない。市町村はベテラン保健師を予定しているだろうが適格者はいるのだろうか。居宅介護支援事業所で多事例のケアマネジメント経験を積み、所外のカンファレンスでトレーニングしていないとスーパーバイザー役を勤めることができない。
 厚労省は新研修体系を提案しているが、研修の具体的方法を提示していない。市町村保健師には民間居宅介護支援事業所で午前中(午後は保健師業務)はCM業務を一年間、体験する研修が必要であろう。また、地区医師会の在宅ケア・カンファレンスは所内カンファレンスと異なり第三者的で公正・中立の研修の場として協力できると思う。


著者:つくば市 室生内科医院 室生 勝先生
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